怪談備忘録

ネットを始め、様々な怪談を集めてみました。

神社境内の古木

地元では古くから名のある神社の神主が病に臥せ、跡取りの息子に代を譲る話が出ていた。

息子は神社の由緒ある歴史を背負う覚悟など無く、神主の座を継ぐのは参拝客を食い物に商売をしようという邪な思いしか胸中に無かった。

境内に生えていた樹齢数百年はあろうかという古木は厳かで神妙な雰囲気を漂わせていたが、息子は不気味で辛気臭いと罵り、枝を全て切り落としてしまった。

すると、息子に異変が起こった。

夜中に境内をうろつくようになり、ぶつぶつと独り言が止まなくなった。生気を失った顔はまるで年を重ねた古木のように血色を失い、シワが深く刻まれていく。

憔悴しきった息子はある日、正気を失い、倉庫にあった枝切りのノコギリで自らの腕を落とし、黒い血を流しながらのたうち、境内の木の根元で果ててしまった。

息子は死の直前「落とした木の枝が体から生えてくる!」と喚き散らしていたそうだ。

樹齢数百年の古木は新たな枝を生やし始め、緑を繁らせる日を期待させている。

その神社には、新たな神主を迎え入れ、惨劇の記憶が薄れた今では、参拝者に憩いのひとときを与えているそうだ。

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