怪談備忘録

ネットを始め、様々な怪談を集めてみました。

生き人形

南こうせつオールナイトニッポンの収録から始まる物語。

「私にも聞かせて」

そう聞こえるテープの音声は、これから起こる少女人形の舞台を演出する呪いかのようだった。

舞台で使われた少女の人形は、自らの悲哀を気付かせるように、関わる者達に災いを背負わせる。

仕事の帰り道に現れた、黒い着物を着た黒髪でおかっぱの少女の影。視界に捉えたと思った瞬間、暗闇に溶け込むかのように、細い目をした顔だけを残して消えてしまう。

前野氏に誘われ少女人形の舞台『呪 夢千年』を務めることになった稲川氏。稽古場で少女人形と初対面を果たすも、前野氏に奇妙なことを告げられる。

「この人形、右手と右足が捻れるんだよ。」

造形作家の小宮氏に調整を依頼しようと連絡するも、音信不通で行方不明になってしまい、修理は叶わぬまま舞台に営むこととなった。

舞台の台本が完成間近になった頃、脚本家の佐江氏の自宅が火に包まれ、原稿が焼失してしまう。まるで少女の意志がそうさせたのか、台本は新たに書き直されることになった。

その後、呪 夢千年に関わるスタッフ達に次々と災厄が降りかかる。前野氏のいとこが急逝し、人形の捻れが示すかのように美術、照明、音声スタッフの右手右足が負傷し、彼らが舞台直前に高熱で倒れ始める。

大事を取り、神社でお祓いを行い、迎えた初舞台は満席の大盛況。しかし、これまでの予兆を裏切ることなく異変は舞台に襲い掛かる。観客を包み込む得たいの知れない寒気、数えると一人多い黒子、操られていた少女人形の手足が割れ剥き出しになる骨格、棺桶に入れる人形が生きた人のように重くなる、声優の杉山氏の頭が発火する謎の怪奇現象…。

『呪 夢千年』は、とある戦時の少女の悲劇を伝えるためにもたらされた、悲哀の物語の幕開けだった。

その後に起こる数々の忌まわしい怨念の宿る霊現象。それは少女の悲劇を再現するように、死人を出し、行方不明者を出し、人々の運命を狂わせ、止むことのない呪いとなって生き続ける。

その呪いの一つ一つが少女の表情を大人の女性へと変え、髪を伸ばし、怨念の一つ一つが少女の目を腫らし、口を裂き、見たものを戦慄させる不気味な顔へと変貌させた。

今も何処かで生き続ける人形は、新たな所有者を求め、怨念の依り代を捜し回っている。

「私にも聞かせて、あなたの苦しみを、あなたの怨みの声を。」

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ペアの少年の人形は、少女と交わり、性的な演出を行っていた。

※長編怪談なので、後半はしょりました。有名な怪談なので私が今更書くまでもなく皆さんご存じのことと思います。未だ知らない方は、その身に呪いを宿すべく、ぜひ検索をかけて動画や全容を読んで頂ければ稲川淳二フリークの私として本望ですので、よろしくお願い致します。

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