怪談備忘録

ネットを始め、様々な怪談を集めてみました。

留守番中の訪問者

まだ小2やったころの話や

母方の実家で祖父と2人で留守番していた
母の実家はどえらい田舎やった
まぁと言っても京都やけど

たぶん夕方前くらいやったかな
まだぜんぜん明るい時間帯でわいは一人でおもちゃ自動車遊びに夢中
祖父はほぼ寝たきりでベットの上
その上痴呆が進んで赤ちゃんみたいに知能が退化していた

玄関が鳴った

家には呼び鈴なんてものはないのでドアを直接こんこんってやる感じ
家には寝たきりのじいちゃんしかいないのでわいが応対しないといけない

あーめんどせぇーなーって渋々立ち上がって玄関まで行ったのよく覚えてる
思えばこの時、本当に居留守使うべきやったと思ってる

玄関のドアのすりガラス越しに人間大の影がゆらゆら左右に揺れてた

「◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?」

そんなことを聞いてくる

◯◯さんってのは母の弟で五年前他界している
もう死んだ人間を訪ねてくるなんてなんなんだよ
わいはその頃まだ小学生だったがなんとなくひどい人物に感じて、つっけんどんに

「いません!」

やや苛立ち混じりに言い放った

すると影はすこし沈黙した後
「◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?」
こんどは祖父の名前だった

わいはちょっと怖くなった
なんだか分からないが正直に答えるべきではない
そう直感した

「い、いません!」
「◯◯さんいますか?」
こんどはわいの名前だった

怖すぎて土間に尻餅ついた
すると音に反応したのか影はずいっと前に進み、
すりガラスのぎりぎり前に張り付き

「◯◯さんいますか?◯◯いますか?◯◯さん、そこにいますか?」

怖さのせいかな
なんだか影が上下左右に膨らんでみえた
ここら辺の記憶はわすれたと思ったころになんかのきっかけで鮮明に思い出す

わいがなんも言えへんでいると
影はガタガタとすりガラスを揺らし初めた

その間ずっとアホみたいに
「◯◯さんいますね?◯◯さんいますね?◯◯さん、そこにいますね?」
そう連呼してた

いよいよ怖くなって声もあげれんくなって
ただおかあさん、おとうさん、助けて助けて助けて助けてください
って心の中で祈ってた

なんかの形で願いが通じたんかは分からん
ただ気づくと寝たきりやったはずの祖父がいつの間にかわいの背後に立ってて

「おらん!そんなやつはここにはおらん!帰れ!」

聞いたことのない声量と形相でそう怒鳴った

影は左右にゆらゆら揺れるへんな挙動をぴたりとやめていなくなった
それを見たわいは安堵から祖父に抱きついて泣きじゃくった

祖父はその年に死んだ

あれはなんやったんやろーなーって今でも思う
ふつうに考えると身寄りのないボケた老人か、もしくは知的障害をもった誰かだったのだと思うわ

ただそれには名前がなくて山からくるもんなんだと
で、それがきたら何があってもとびらを開けたらダメで開けない限り入ってくることはないみたい
ただ田舎でよくある玄関全開みたいなことしてたらそれは終わりらしい

それが帰ったあと祖父はしきりに

「開けんかったか!玄関は開けんかったか!開けんかったんやな!?」
ってしつこいくらい聞いてきて怖かったの覚えてる

わいが「開けてないよ」って答えると安堵したように「そうか」といって息を吐き、
「もしまた来ても絶対に開けるな」そう強く言い含められた

祖父が死んだあと残された祖母は寂しそうにしてたが今も生きてる
けどすっかり痴呆が進んで今は入院中だ

この間わいの両親と病院に見舞いにいった
母は花びんの水を替えに席を立ち父はどこかに電話をしに部屋をでた

残されたのはわいとばあちゃん

ばあちゃんは痴呆でまともに話すこともできん
たしか今年で89や
それも当然やなー

そんでや
なのにばあちゃんたらな、一瞬目に知性を取り戻してわいに言ったんや

「おおきなったー◯◯←わいの名前。おじいさんに感謝しなアカンよ」
って

意味はわかりたくない

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心霊・怪談へ
にほんブログ村