怪談備忘録

ネットを始め、様々な怪談を集めてみました。

逆手のナイフ

主婦のみこさんは家計の助けにと思い、パート勤めに出始めていた。

 

仕事中は立ちっぱなしの食品製造工場で、いつも帰宅するときには疲れ果てて足元がおぼつかなくなっていた。

 

それでも夫のため子供のため、家事をこなさなくてはならない。

 

朝食の片付けを後回しにしていたみこさんは、テーブルの上の食器を片付けようとしていた。

 

子供たちの好きなピザを乗せる大きなお皿と、ピザを切るためのナイフを手に取り、洗面台に向かおうとした。

 

お皿が大きかったため足元が見えにくい上、仕事で疲れ果てた足元は床のつまずきに対応できず、不意に転んでしまった。

 

ナイフを逆手に持っていたのが災いした。

 

転んだ拍子に、逆手のナイフが、お腹に突き刺さってしまったのだ。

 

床一面が赤く染まる。

 

呻き声をあげながら、みこさんの意識は遠退いていく。

 

帰宅した子供が赤く染まった床に転がるみこさんを見たときには、非日常の光景にパニックを起こしてしまった。

 

近所の人に助けを乞い、母を病院へと送る。幸いにも命は助かった。

 

日常の些細なことで、大きな傷と、子供にトラウマを与えたみこさんは、日常の中に潜む注意しなければ気付き得ないふとした恐怖に神経を尖らせるようになり、不眠が続いてるそうだ。 

 

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みんなこっち

7月26日は怪談の日だそうです。

1825年のこの日は、江戸の中村座で『東海道四谷怪談』が初演されました。

四谷怪談』は、四谷左門の娘・お岩が、夫・民谷伊右衛門に毒殺され、幽霊となって復讐を果たす話で、実際に起こった事件をモデルにしています。

新宿区四谷左門町にはお岩を祀る「於岩稲荷田宮神社」がありますね。

そんな怪談の日に1つ小話を。

夕暮れ時に虫が鳴き始めると心霊がより感じやすくなり、誰も居ない公園に佇むと、木々の隙間からふと人の気配やこちらに投げ掛ける視線を錯覚してしまいます。

とある夏の日。

「みな」

そう口ずさみながら目が覚めたんです。

みな? 何か忘れてる気がして古い携帯の電源を入れたら…創作の主人公の名前が目に留まりました。

不可解なことなのですが、その「深奈」から数日後メールが来たのです。

内容は、「私を見て…」と、その一言だけでした。
創作の主人公の名前からのメール? 誰が送ったのだろう?

その主人公の名前の由来は
深い奈落で「深奈」みな、としたのです。

私を見て…

まるでそのメールは、どこまでも果てしない暗闇の穴から「私を見て…」と、「私だけしか見ないで…」と、言っているかのようでした。

何度も心の内でその言葉を繰り返していると、少しずつゲシュタルト崩壊を起こして仕舞う程、なぜか心が病んでいきました。

わたし…だけ…しかみ…ないで

腸(わた)し…渡死(わたし)…嶽(だけ)しか…死神(しかみ)…深奈(みな)…皆(みな)出(い)で…

腸し嶽 死神 名 出で

皆から、いや、深奈から、そう、メールが…

そう、皆から、メールが来たんです。

みんなみんなみんなみんなみんな
みんなみるなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんナみんな

コッチ ヲ ミるナ

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夜空の星のように

F子さんは幼少の頃から動物を飼うのが好きで、猫や犬を数匹育てていた。動物好きが高じてペットショップで働くことになり、愛らしい犬猫の世話をすることにやりがいを感じ、天職に恵まれたと熱意をもって仕事に取り組んでいた。

ペットショップは購入に至らなかった動物は商品にならないので、引き取り業者にお願いをする可哀想な子も多く居る。

F子さんは業者の実態を知らなかった。

引き取られた子達の運命を心配はしていたものの、その多くが悲劇に見舞われることを、知らずにいた。

ある日いつものように仕事をしていると、ケージの中に、引き取られたはずのワンちゃんが居るのが見えた。

「あれ?」と思い、ケージの近くにきて覗き込むも、その中は空であった。「おかしいな?」と思うと、ワンちゃんの悲しい鳴き声が響いた。

嫌なものを感じたF子さんは、店長に起きたことを告げると、別段驚きもせずF子さんに

「もっと驚くものを見せてあげようか?」と言った。

営業を終えてからF子さんをペットショップの空き部屋に連れていくと、おもむろに電気を消した。

すると壁や天井に淡く光る無数の明かりが小さくきらめいた。それはまるで夜空の星のように綺麗で、F子さんは店長が気晴らしに楽しませてくれたのだと心を和ませた。

「素敵ですね。」そう店長に言うと、「えっ?」と驚いた様子を見せた。

店長は引き取り業者にお願いした動物の末路を知っていたので、毎年一回この空き部屋で、葬儀業者に頼みペット供養を行っていた。ペットショップは売れ残った子達は経営の負担となるため、引き取り業者の存在無しには成り立たないのだ。

「暗闇に浮かんだ光はさ、ここで売ってた動物達の目なんだよ。年に一度の供養の日にだけ現れるんだ。不思議だろ? ペットショップのケージの中が一番幸せなときだったのかな。」

引き取られた動物達は業者が転売を図るが、売れなかった子達は余程善意のある業者でない限り、ろくな世話も受けず、病気や衰弱して死んでしまうという。

星空のように見えたものは、この店に未練を残した動物達の無数の目が、恨めしそうに私達を見ていたのだ…。そう気付くとぞっとして、卒倒しそうになった。

「この光に慣れてこそペット業者は一人前だ。F子さんには期待してるよ。」

店長に笑顔を向けて励まされたが、F子さんは気が気ではなくなり、そのままペットショップを辞めてしまった。

「今でも可愛がってた子達のことや、あの部屋に浮かんだ無数の目の明かりを思い出すんです。」

F子さんはこの経験がトラウマとなり、現在は引き取り手の無い動物達の里親を捜すボランティアを請け負っているそうだ。

F子さんはその後、夜空を見上げると動物達がこちらを見ている…と恐怖に駆られてしまい、星空を見ることはなくなってしまったという。

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留守番中の訪問者

まだ小2やったころの話や

母方の実家で祖父と2人で留守番していた
母の実家はどえらい田舎やった
まぁと言っても京都やけど

たぶん夕方前くらいやったかな
まだぜんぜん明るい時間帯でわいは一人でおもちゃ自動車遊びに夢中
祖父はほぼ寝たきりでベットの上
その上痴呆が進んで赤ちゃんみたいに知能が退化していた

玄関が鳴った

家には呼び鈴なんてものはないのでドアを直接こんこんってやる感じ
家には寝たきりのじいちゃんしかいないのでわいが応対しないといけない

あーめんどせぇーなーって渋々立ち上がって玄関まで行ったのよく覚えてる
思えばこの時、本当に居留守使うべきやったと思ってる

玄関のドアのすりガラス越しに人間大の影がゆらゆら左右に揺れてた

「◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?」

そんなことを聞いてくる

◯◯さんってのは母の弟で五年前他界している
もう死んだ人間を訪ねてくるなんてなんなんだよ
わいはその頃まだ小学生だったがなんとなくひどい人物に感じて、つっけんどんに

「いません!」

やや苛立ち混じりに言い放った

すると影はすこし沈黙した後
「◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?◯◯さんいますか?」
こんどは祖父の名前だった

わいはちょっと怖くなった
なんだか分からないが正直に答えるべきではない
そう直感した

「い、いません!」
「◯◯さんいますか?」
こんどはわいの名前だった

怖すぎて土間に尻餅ついた
すると音に反応したのか影はずいっと前に進み、
すりガラスのぎりぎり前に張り付き

「◯◯さんいますか?◯◯いますか?◯◯さん、そこにいますか?」

怖さのせいかな
なんだか影が上下左右に膨らんでみえた
ここら辺の記憶はわすれたと思ったころになんかのきっかけで鮮明に思い出す

わいがなんも言えへんでいると
影はガタガタとすりガラスを揺らし初めた

その間ずっとアホみたいに
「◯◯さんいますね?◯◯さんいますね?◯◯さん、そこにいますね?」
そう連呼してた

いよいよ怖くなって声もあげれんくなって
ただおかあさん、おとうさん、助けて助けて助けて助けてください
って心の中で祈ってた

なんかの形で願いが通じたんかは分からん
ただ気づくと寝たきりやったはずの祖父がいつの間にかわいの背後に立ってて

「おらん!そんなやつはここにはおらん!帰れ!」

聞いたことのない声量と形相でそう怒鳴った

影は左右にゆらゆら揺れるへんな挙動をぴたりとやめていなくなった
それを見たわいは安堵から祖父に抱きついて泣きじゃくった

祖父はその年に死んだ

あれはなんやったんやろーなーって今でも思う
ふつうに考えると身寄りのないボケた老人か、もしくは知的障害をもった誰かだったのだと思うわ

ただそれには名前がなくて山からくるもんなんだと
で、それがきたら何があってもとびらを開けたらダメで開けない限り入ってくることはないみたい
ただ田舎でよくある玄関全開みたいなことしてたらそれは終わりらしい

それが帰ったあと祖父はしきりに

「開けんかったか!玄関は開けんかったか!開けんかったんやな!?」
ってしつこいくらい聞いてきて怖かったの覚えてる

わいが「開けてないよ」って答えると安堵したように「そうか」といって息を吐き、
「もしまた来ても絶対に開けるな」そう強く言い含められた

祖父が死んだあと残された祖母は寂しそうにしてたが今も生きてる
けどすっかり痴呆が進んで今は入院中だ

この間わいの両親と病院に見舞いにいった
母は花びんの水を替えに席を立ち父はどこかに電話をしに部屋をでた

残されたのはわいとばあちゃん

ばあちゃんは痴呆でまともに話すこともできん
たしか今年で89や
それも当然やなー

そんでや
なのにばあちゃんたらな、一瞬目に知性を取り戻してわいに言ったんや

「おおきなったー◯◯←わいの名前。おじいさんに感謝しなアカンよ」
って

意味はわかりたくない

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蠢く毛虫の集合体

3~4歳の頃。

夜にふと目が覚めると、隣で寝てる母親以外の物が全て毛虫の集合体に見えて、一晩中泣き叫んだ事がある。

シーツの生地とか、自分の影とか、パジャマの柄とか、色はそのままなんだけど全てがウネウネ蠢く毛虫のように見えた。

当時は虫を飼っては死なせたり、棒でつついたり、踏み潰して遊んだりもしていたから、バチがあたったのかもしれない。

その日から少なくとも毛虫は触れなくなった。

もしかしたらあれが不思議の国のアリス症候群ってやつだったんだろうか 。

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巨頭オ

「巨頭オ」

数年前、ふとある村の事を思い出した。

一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。

心のこもったもてなしが印象的で、思い出す内に再び行きたくなった。

連休に一人で車を走らせた。

記憶力には自信があるほうなので、旅館までの道のりは覚えていた。


村に近付くと場所を示す看板があるはずなのだが、その看板を見つけたとき、「あれっ?」と思った。


「この先○○km」となっていた(と記憶していた)看板が、「巨頭オ」になっていた。

なんとも奇妙で違和感のある響きなので、嫌な予感と胸騒ぎに襲われたが、行ってみたい気持ちが交錯しながらもその誘惑に負け、行ってみる事を決意した。

車で入ってみると村は廃村になっており、雑草が覆い繁り、建物にも草が巻きついていた。


車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、頭がやたら大きい人の姿をした者が現れた。

「え?え?」と動揺していると、周囲にも無数に居るではないか!

しかも全身が総毛立つような不気味な動きで追いかけてきた・・・。それは両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながらという、およそ言葉では説明し難い動きであった。

車から降りないでよかった。

あまりの恐ろしさから急発進で車をバックさせ、一刻も早く逃げたい思いで国道まで飛ばした。

帰って地図を何度確認しても、数年前に言った村と、その日行った「巨頭オ」という廃村の場所に間違いはなかった。

あの日体験したことが現実なのか自信を失いそうになるが、もう一度行こうとは思えなかった。

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神社境内の古木

地元では古くから名のある神社の神主が病に臥せ、跡取りの息子に代を譲る話が出ていた。

息子は神社の由緒ある歴史を背負う覚悟など無く、神主の座を継ぐのは参拝客を食い物に商売をしようという邪な思いしか胸中に無かった。

境内に生えていた樹齢数百年はあろうかという古木は厳かで神妙な雰囲気を漂わせていたが、息子は不気味で辛気臭いと罵り、枝を全て切り落としてしまった。

すると、息子に異変が起こった。

夜中に境内をうろつくようになり、ぶつぶつと独り言が止まなくなった。生気を失った顔はまるで年を重ねた古木のように血色を失い、シワが深く刻まれていく。

憔悴しきった息子はある日、正気を失い、倉庫にあった枝切りのノコギリで自らの腕を落とし、黒い血を流しながらのたうち、境内の木の根元で果ててしまった。

息子は死の直前「落とした木の枝が体から生えてくる!」と喚き散らしていたそうだ。

樹齢数百年の古木は新たな枝を生やし始め、緑を繁らせる日を期待させている。

その神社には、新たな神主を迎え入れ、惨劇の記憶が薄れた今では、参拝者に憩いのひとときを与えているそうだ。

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